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京都国際ダンスワークショップフェスティバル2025におけるニア・デ・ヴォルフ氏の招聘について(ご質問への回答)
- 投稿日
- 2025年7月28日
- 更新日
- 2025年7月29日
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- お知らせ
京都芸術センター主催事業「京都国際ダンスワークショップフェスティバル2025」における講師、ニア・デ・ヴォルフ氏の招聘に関して、市民の方からご質問をいただきました。以下に、事実関係を整理し、当館としての見解を回答いたします。
【質問1】
昨今のパレスチナ情勢の中、なぜイスラエルに関係するアーティストを招聘するのですか?
京都芸術センターは、表現の自由と文化的対話を尊重する立場から、芸術家個人の表現活動と、その出自や居住する国家の政治的立場とを同一視することはいたしません。
ニア・デ・ヴォルフ氏は、共同主催者である一般社団法人ダンスアンドエンヴァイロメントによって招聘候補として選出され、当館としても、本プログラムにふさわしい実力のあるダンサーかつ指導者であると判断し、招聘を承認いたしました。
【質問2】
今回の招聘にあたり、イスラエル関係機関からの支援・援助はありますか?
ありません。
また、質問状にてご指摘のあった「America-Israel Cultural Foundation」のウェブサイトに掲載されていたニア・デ・ヴォルフ氏の情報については、ご本人が関知しないまま、本人の意思に反して作成されたものであることを確認しています。 すでにニア氏より直接、同財団に対して削除の要請がなされており、2025年5月30日時点で、当該ページから氏の情報は削除済みであることを申し添えます。
【質問3】
ニア氏がプロフィールにイスラエル軍での兵役歴を記載している理由は?
プロフィール文は、アーティスト本人の提出資料に基づいて作成しています。兵役に関する記載については、当館から問い合わせることはしておりません。
この点に関するご質問は、すでにニア・デ・ヴォルフ氏ご本人と共有しており、以下のメッセージを受け取っております。
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親愛なる皆様、親愛なるアーティストの皆様、
2000年、私がまだ若きアーティストだった頃、私は故郷を離れ、今日に至るまでヨーロッパに生活しています。
2007年にベルリンで私のダンスシアターカンパニーを設立して以来、
私の芸術的な使命と努力は、世界中のアーティストの間で希望、共感、平等を広めることに注がれてきました。
私は「人間として私たちを結びつけるものは何か」という問いについて取り組んでおり、憎しみによって私たちを分断しようとするあらゆる政治的勢力に従うことを拒否しています。それは私の故郷であれ、22年間を過ごしたドイツであれ、この地球上のどこであれ、同じです。
その点において、私の人生の最大の使命の一つは、中東のアーティストたちとつながり、協力し、平和とより良い未来のための希望の架け橋を共に築くことです。
芸術家としての歩み始めたときから、私は芸術家と芸術家ではない人たちの双方に、身体と心の自由を探求する機会を提供してきました。これは異なる文脈が横たわっている世界の中で、100%の愛と尊重をもって行っています。
私のウェブサイトwww.totalbrutal.netをじっくりとご覧いただき、それぞれのプロジェクトとその芸術的文脈を確認することで、私の芸術的、感性的、普遍的な道のりを理解していただければ幸いです。
私の名前をGoogleで検索すると、多くのリンクが見つかり、私がヨーロッパで唯一、イスラエルを長年離れても中東の多様なアーティストと協働を続ける確立された振付家であることがわかります。
私は現在のすべての戦争に強く反対し、この複雑な地球上の誰もが自由に生き、踊るべきだと信じています。
ニア・デ・ヴォルフ、2025年5月31日、ベルリン。
(抄訳:京都芸術センターによる)
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※また、ニア・デ・ヴォルフ氏が関わり、2025年7月にベルリンで開催されたイベント「The Freedom Picnic」のリンクを共有いたします。本イベントでは、中東出身のダンサーたちが、ガザ地区で苦しむ子どもたちへの支援を目的として寄付を呼びかけています。
https://dock11-berlin.de/en/theater/program/calendar/the-freedom-picnic
【最後に】
京都芸術センターチーフ・プログラムディレクター山本麻友美よりメッセージを付記します。
世界各地で現在も続くあらゆる戦争や紛争、暴力的な行為に対して、私は強く反対の意思を表明します。なかでも、イスラエルおよびパレスチナ双方の市民が深刻な脅威にさらされていること、特にガザ地区における、ジェノサイドの懸念が指摘されているような極めて深刻な人道的状況について、深く憂慮しています。
それと同時に、私は、さまざまな立場や出自をもつ人々が関わる芸術実践と、それを通じた対話が、このような非人道的状況の改善に資する力を持っていると信じています。
イスラエル・パレスチナ間の衝突をめぐっては、世界中の多くのアーティストたちが声を上げています。彼らと同じく芸術に関わる身として、また今の時代を生きる市民として、「何ができるのか」を考え続けることこそが、力を持つと考えています。
同時に、京都芸術センターで働く私たちは、この場所を、意見の異なる人々がともに集い語り合える場として持続させる使命があると考えています。
京都市は1978年に「世界文化自由都市宣言」を採択し、次のように宣言しました。
「世界文化自由都市とは,全世界のひとびとが,人種,宗教,社会体制の相違を超えて,平和のうちに,ここに自由につどい,自由な文化交流を行う都市をいうのである。」
この宣言がどこか呑気に感じられるほど、現在の状況は逼迫してます。だからこそ、この宣言を京都の中だけに留めるのではなく、世界へとつなげ、広げていくことが必要だと感じています。今後も、京都芸術センターはその活動を通して、平和と対話の価値を分かち合う場の実現を目指していきたいと考えています。
京都芸術センター チーフ・プログラムディレクター 山本麻友美