京都芸術センター|KYOTO ART CENTER
 

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夏休み企画展2015 『ハイパートニック・エイジ』

ジャンル
  • 美術美術
形   態
  • 展覧会展覧会
事業区分
  • 主催主催

滲み出す、若い創造性

 多数の芸術大学が立地する京都。若いアーティストが育ち、新しい表現が日々生み出されています。創作を続けることは、先の見えない不安と隣り合わせの道を歩むことでもあります。それでも、彼らがなお、つくり続けることを選ぶのは一体なぜでしょうか。

 ハイパートニックとは、「高浸透圧の」「高濃度の」という意味です。動物細胞は、自身より濃度の低い溶液の中では、周りの溶液を吸収しながら膨張していきます。濃度の差によって生じる圧力が大きければ、細胞は膨らみ続け、差が埋まらなければやがて破裂してしまいます。
 創作が世界を拡張する行為だとすれば、そこには自身の存在を賭すような、切実なやりとりが存在しているのではないでしょうか。

 今回の夏休み展では、京都の芸術大学を卒業し、その後も京都を拠点に活動を続ける、20代の若手作家4名を取り上げます。
 1人目は、仮設壁やマスキングテープなどで壁面を覆い尽くすという方法で、密度のある空間をつくりだす川田知志。フレスコの鮮やかな色彩が、モチーフとなった小さな雑草たちの生命力を空間いっぱいにみなぎらせます。
 2人目は、ドローイングやインスタレーション作品など、幅広く活動を展開しているNAZE。自らの中から湧き上がる、衝動や記憶と向き合うことで得られる独自の世界は、圧倒的な存在感をもって現実の世界を浸食していきます。
 前谷開は、ある日ふと意識され、次第に存在感を増してきた孤独の感情から、カプセルホテルや家の床下という完全に一人になれる環境に身を置き、そこでの行為をもとに制作を始めました。彼のセルフポートレートを軸とした写真は、内視鏡のように、意識の下層にある内面的な世界を写し出します。
 デカルコマニーの手法と、土を使用したテンペラ絵具で制作を続ける薬師川千晴は、質量をもたない情報の世界に圧倒される現状への不信感を抱きながら、静と動、一瞬と永遠といった、相反する性質を同時に内包する存在としての絵画の可能性を模索し、時間を絵画に刻印しようと試みます。

 フレームに収まらない、彼らの滲み出すような表現の裏には、鋭敏な感性と、彼らを創作へと向かわせる必然が確かに存在しているように感じます。彼らが内に抱える創造性は、孤独や不安、葛藤といった困難さえも呑み込み、より強い表現となって現れてきます。
 子どものような鋭い感受性を持ちつづけ表現していくことは、易しいことではないかもしれません。しかし同調が求められがちな、この高圧的(ハイパートニック)な時代において、彼らの表現はより強いリアリティと説得力とをもって、私たちに迫ってくるのではないでしょうか。
 表現を生み出す強い創造性は、たとえその存在を忘れてしまっていたとしても、あなたの中にも息づいているものかもしれません。

[関連企画]
1.ギャラリートーク
出展作家による作品解説を行います。
日時:7月20日(月・祝)16:00~
会場:ギャラリー北・南
※ギャラリー南より開始します
※終了後、18:00よりオープニングパーティを開始します

2.フレスコ/テンペラ体験ワークショップ
絵具づくりと作品制作を行います。
日時:8月1日(土)、2日(日)
※詳細・申込は以下をご覧ください
http://www.kac.or.jp/events/16299/
制作した作品は8月8日(土)、9日(日)の2日間、
京都芸術センター談話室にて展示します。(10:00~20:00)

3.アーティスト・ミーティング
日時:8月30日(日)19:00~21:00
※詳細は以下をご覧ください
http://www.kac.or.jp/events/16513/

【番外編】
「セルフポートレートを撮るワークショップ」
日時:8月25日(火)、27日(木)-29日(土)
※詳細は以下をご覧ください
http://www.kac.or.jp/events/16655/
日時
2015年7月20日(月・祝)-8月30日(日) 【終了しました】
10:00-20:00
※8月14日(金)-16日(日)は臨時休館
※入場無料
会場
京都芸術センター ギャラリー北・南ほか
カタログ販売
8月20日(木)より、本展カタログを京都芸術センター窓口にて販売いたします。(10:00~20:00)
写真:松見拓也  デザイン:三重野龍
価格:500円(税込)

【仕様】
仕 様:角0封筒/ ※中に4名の作品集が入ります

A1変形ポスター(川田知志作品)
https://www.kac.or.jp/wp-content/uploads/kawata.jpg

A5小冊子(NAZE作品)
https://www.kac.or.jp/wp-content/uploads/naze.jpg

A7・B7カードセット(前谷開作品)
https://www.kac.or.jp/wp-content/uploads/maetani.jpg

B4カード(薬師川千晴作品)
https://www.kac.or.jp/wp-content/uploads/yakushigawa.jpg

展覧会ステートメント
https://www.kac.or.jp/wp-content/uploads/hypertonic_age.pdf

川田知志 (かわた さとし)

1987年大阪府生まれ。2013年京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻修了。主な展覧会に、「Colors of KCUA 2012『ー通感ー』」(池田精堂との共同制作、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA、2012)、「境谷小学校作品展」(京都市立境谷小学校、2014)、「京都銭湯芸術祭2015」(玉の湯、2015)、『1floor 2015「対岸に落とし穴」』(神戸アートビレッジセンター、2015/10/31-11/23)ほか。http://kawatasatoshi.tumblr.com/

『1floor 2015「対岸に落とし穴」』(2015/10/31~11/23)
http://www.kavc.or.jp/art/1floor/2015/

NAZE

1989年茨城県生まれ。ゴミや廃材などの収拾物、印刷物や写真など既存のモチーフに描くドローイング作品や、ゴミを即興で組み合わせて作る杖などを制作。個人での活動の他にcontact Gonzo、犯罪ボーイズといったアーティストユニットでも活動。
『鉄道芸術祭vol.5 ホンマタカシプロデュース もうひとつの電車 ~alternative train~』(アートエリアB1、
大阪、2015/10/24-12/26)、『VOCA展2016』(上野の森美術館、東京、2016/3/12- 30)に出展予定。
http://nazezknw.tumblr.com/

前谷開 (まえたに かい)

1988年愛媛県生まれ。2013年京都造形芸術大学大学院修士課程修了。2013年写真新世紀佳作受賞。主な展覧会に「これからの、未来の途中ー美術・工芸・デザインの新鋭11人展」(京都工芸繊維大学美術工芸資料館、2015)、「Second Kiss」(YEBISU ART LABO、愛知、2014)、「大学美術館を活用した美術工芸分野新人アーティスト育成プロジェクト」展覧会(ARTZONE、京都、2015/11/28-12/23)、『ULTRA AWARD 2015 Exhibition』(ギャルリ・オーブ、京都2015/12/9-21)など。

薬師川千晴 (やくしがわ ちはる)

1989年滋賀県生まれ。2013年京都精華大学大学院芸術研究科博士前期課程芸術専攻卒業。2010年京展芝田記念賞受賞。主な展覧会に「絵画碑」(Gallery PARC、京都、2014)、「科学のあとに詩をかくこと」(gallery 16、京都、2013)、『Kyoto Current 2015』 (京都市美術館別館、2015/11/18-22)ほか。個展(Gallery PARC、2015/10/20-11/1)開催予定。

主催

京都芸術センター

問合せ先

京都芸術センター
TEL:075-213-1000 / FAX:075-213-1004
E-mail:info@kac.or.jp
〒604-8156 京都市中京区室町通蛸薬師下る山伏山町546-2

料金

入場無料

協力

東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS) 
http://haps-kyoto.com/

Gallery PARC http://www.galleryparc.com/

VOU http://voukyoto.com/

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